抜け毛の判定

ストレスの抜け毛とAGAの抜け毛は何が違う?量ではなく「抜け方の形」で切り分ける

どちらも「抜け毛が増える」点は同じです。違いは、量ではなく形に出ます。

繁忙期と重なって抜け毛が増えた。ならば原因はストレスで、落ち着けば元に戻るはずだ。この筋道はごく自然で、そのとおりになることも少なくありません。

ただ、外れることがあります。 生活が忙しかった時期と、別の理由で抜け毛が増え始めた時期が、たまたま重なっていることがあるからです。ストレスという説明はどんな状況にも当てはめられるので、当てはめた瞬間に考えるのをやめてしまいやすい。そこが落とし穴です。

この記事では、量ではなく抜け方の形で切り分けるという考え方を整理します。ストレスと呼ばれるものによる抜け毛と、AGA(男性型脱毛症・女性型脱毛症)とされるものでは、増え方の性質そのものが違うとされているためです。

切り分けの4つの軸

まず全体像です。細かい説明の前に、見る軸を並べます。

見る軸 一時的な要因で説明しやすい 進行性のものとして扱われやすい
抜ける場所 頭全体に散らばる 前頭部・つむじ・分け目に寄る
始まり方 何月からか言える 起点がはっきりしない
時間の関係 心当たりから遅れて始まり、やがて収まる 心当たりがなく、だらだら続く
抜けた毛の質 太さも長さもそろう 細くて短いものの比率が上がる

どれか1つで決めないでください。 4つのうちいくつが当てはまるかで見ます。

軸1:全体から抜けているか、一部に偏っているか

読み取りやすいのはここです。

体調や生活の変化にともなう抜け毛は、頭のどこか一部だけを選んで起きるものではないとされています。全体からまんべんなく抜けて、髪全体のボリュームが落ちるという出方をします。

一方、AGAとされるものは出やすい場所に偏りがあるとされています。生え際、頭頂部、女性では分け目の幅など、変化が特定の部位に集中します。

鏡の前では、場所ごとの差を見てください。どこも似たように薄くなってきたのか、それとも一箇所だけが変わったのか。偏っているという事実そのものが、本数より雄弁です。

軸2:始まりの時期を特定できるか

「いつから増えましたか」と聞かれたとき、答えが出てくるかどうか。

一時的な要因のものは、起点を言えることが多いとされます。この月を境に急に目立った、その前は何とも思わなかった、という形で思い出せる。

進行性のものは、始まりがあいまいになりがちです。気づいたときにはもう変わっていた、去年の写真と比べて初めて分かった、という気づき方をします。答えられないこと自体が情報です。

軸3:きっかけとの時間差

ここは誤解が多いところなので、少し丁寧に書きます。

強い負荷がかかった直後に抜けるとはかぎりません。 髪には生えて伸びて抜けるまでの周期があるため、体に何かが起きてから抜け毛として表に出るまでには、しばらく時間が空くとされています。数週間から数か月というのが一般的な説明です。

これが何を意味するかというと、いま抜けているのは、いまのストレスのせいとはかぎらないということです。逆に、思い当たる時期が数か月前にあるなら、時間差として説明が通ることになります。

そしてもう一つ。原因が取り除かれても、すぐに元に戻るわけではありません。 同じ理由で、回復も時間差で現れるとされています。落ち着いたのに戻らないと焦る必要はありませんが、半年、1年と経っても変化がないなら、時間差では説明しきれなくなります。

軸4:抜けた毛の質

量が同じでも、質が変わっているかどうかで意味は変わります。

白い紙に10本から20本を並べ、太さと長さがそろっているかを見ます。増えたのは本数だけで一本一本は以前と変わらない、というなら、量の振れとして説明がつきます。細く短いものの比率が上がっているなら、動いているのは量ではなく質であり、時間が解決するものとしては扱いにくくなります。

観察の手順は危ない抜け毛の見分け方に詳しくまとめています。

両方が重なることもある

切り分けと書きましたが、どちらか一方に決まるとはかぎりません。 進行性の変化がゆるやかに進んでいるところに、生活の負荷が重なって一時的に増える、という重なり方は起こり得ます。

この場合、負荷が抜ければ量は戻ります。ところが戻った先の水準が、去年より一段低いということが起こります。「戻ったのだから問題ない」で止めると、この一段ぶんが見えないまま過ぎます。

だから、量が戻ったかどうかだけでなく、残っている側が去年と同じかを見ます。同じ照明・同じ乾き具合で撮った写真があれば、記憶に頼らず比べられます。その考え方は抜け毛は1日何本まで正常?に整理しています。

生活の見直しでできること、できないこと

睡眠、食事、休息。これらを整えることは、髪にとって不利にはなりません。土台を整えるという意味では意味があります。

ただし、生活の見直しでできるのは、悪化させている要因を減らすところまでです。進行性の変化そのものに対して、生活習慣だけで押し返せるという説明には根拠が乏しいものが多く含まれます。「まず生活から」と言われて数年が過ぎる、というのはよくある流れです。

見直しは続けながら、4つの軸で偏りや質の変化が出ているなら、それは別問題として確かめる。 両方を同時にやるのが現実的です。市販ケアの限界については薄毛でやってはいけないNG習慣にまとめています。

セルフチェックの範囲を超えるサイン

ここまでは自分の目で確かめるための目安であって、診断ではありません。下のどれかに心当たりがあるときは、切り分けを後回しにして医療機関にご相談ください。

  • 髪が抜けた部分が円く、地肌がはっきり出ている
  • 増え方が急で、この数週間のうちに変わった
  • かゆみ、赤み、痛みが強い。フケの量が明らかに多い
  • 出産、大きな病気、新しい薬を飲み始めた時期と重なっている
  • 髪の変化と前後して、体調そのものが変わっている

円く抜ける、短期間で急に増えるという出方は、この記事で扱った2つとは別の経過をとることがあります。自分の判断で様子見に回さないでください。

次の一歩

4つの軸のうち、いくつ当てはまったでしょうか。偏りがあり、始まりが特定できず、毛の質が変わっているという組み合わせなら、時間を置く判断より、状態を確かめる判断のほうが選択肢を多く残せます。

いまの段階で髪型がどこまで使えるかは、薄毛が目立ちにくい髪型の選び方にまとめています。

よくある質問

ストレスによる抜け毛は元に戻りますか。 一般には、原因が取り除かれれば時間をかけて回復に向かうと説明されます。ただし個人差があり、期間も一定ではありません。戻る前提で放置するより、記録して確かめるほうが取りこぼしがありません。

ストレスの抜け毛にはどんな特徴がありますか。 全体から均等に抜ける、始まりの時期がはっきりしている、きっかけから遅れて始まる、毛の太さや長さはそろっている、という組み合わせで語られることが多くなります。

忙しい時期を過ぎたのに戻りません。 回復も時間差で現れるとされるため、すぐに戻らないこと自体は珍しくありません。ただし半年、1年と変化がない場合は、時間差以外の説明を考える段階です。

ストレスとAGAの両方ということはありますか。 起こり得ます。量が戻っても、残っている側が以前と同じかどうかを合わせて見てください。


参考・出典

  • 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/medical/guideline/4742/
  • 厚生労働省「医療広告ガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html

本記事は一般的な情報の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷う場合は医療機関にご相談ください。

本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。薄毛の原因や対処には個人差があります。症状や進行が気になる場合は、医師など専門家にご相談ください。